「Copilotの有償版を入れたい」と相談されたとき、それが何を指しているのかが毎回あいまいになります。
無料のCopilotなのか、Microsoft 365に付いてくるCopilot Chatなのか、月額のアドオンなのか。調べ始めると製品名がどれも「Copilot」から始まるので、余計に混乱します。

公式ドキュメントで整理したところ、名前の付け方そのものに罠がありました。 さらに、アドオンを買わなくてもCopilotが含まれる上位プランが2026年5月に増えています。 この記事の内容は2026年10月17日時点のものです。仕様も価格も変わるので、契約前には必ず公式で確認してください。
1. Microsoftの呼び方は「買う物の名前」と「段階の名前」で別々にある
混乱の最大の原因はここでした。2つの軸があります。
買う物(SKU)の名前
- Copilot Chat
- Microsoft 365 Copilot Business(中小企業向け)
- Microsoft 365 Copilot(大企業向け)
Microsoftが文書で使う段階の名前
- Copilot Chat (Basic)
- Microsoft 365 Copilot (Basic)
- Microsoft 365 Copilot (Premium)
同じ「Microsoft 365 Copilot」という語が、買う商品の名前としても、段階の名前としても出てきます。 販売店の見積もりと公式ドキュメントを並べて読むと噛み合わないのは、これが理由です。
2. 「Microsoft 365 Copilot (Basic)」は有償版ではない
いちばん引っかかるのがこれです。
公式ドキュメントによれば、Microsoft 365 Copilot (Basic) とは「Copilotアドオンライセンスはないが、アプリ内のCopilot機能への標準的なアクセスはできるユーザー」を指します。
つまり名前に「Microsoft 365 Copilot」と入っているのに、お金を払っていない状態です。
| 段階 | 有償アドオン | Word・Excel内のCopilot |
|---|---|---|
| Copilot Chat (Basic) | なし | 使えない |
| Microsoft 365 Copilot (Basic) | なし | 使える(標準アクセス) |
| Microsoft 365 Copilot (Premium) | あり | 使える(優先アクセス) |
「Basicを使っています」と言われたとき、それが課金されているかどうかは名前から判断できません。 テナントの契約内容を見るしかありません。
なお標準アクセスは「サービス容量の影響を受け、1日を通して異なる場合があります」と明記されています。混雑時に遅くなったり使えなかったりする前提の枠です。優先アクセスとの差はここにあります。
上の2つは何で分かれるのか
当然こう思います。どちらもアドオンを買っていないのに、なぜ片方はWordで使えて片方は使えないのか。
公式ドキュメントはここを明示していません。 「Microsoft 365 アプリのチャット エクスペリエンスは、テナントの構成とライセンスによって異なります」として、ライセンスの前提条件のページに誘導しているだけです。
自分のテナントがどちらなのかは、管理センターで確認するしかありません。 プラン名から推測しようとすると外れます。
3. 決定的な差は「社内のデータを自動で読むか」
機能の違いを並べると項目が多くなりますが、選ぶときに効くのは1つだけでした。
Premium だけが、社内のメール・会議・ファイルを自動で読みます。
- Basic系(Chat / Copilot の両方): Microsoft Graph にアクセスできない。社内の情報を使いたければ、ファイルをアップロードするか、TeamsやOutlookで開いている内容に対して使う必要がある
- Premium: Microsoft Graph と Work IQ を通じて、メール・ファイル・会議・予定表・組織の人間関係を自動で引いてくる
ここを「Basicでは社内文書を扱えない」と理解すると誤りです。手で渡せば扱えます。 違うのは自動で探してくるかどうかです。
Premiumにはこのほか、Copilot検索、セマンティックインデックス、Microsoft Purviewによる機密ラベルの適用、SharePoint高度な管理(過剰共有の抑制)が付きます。いずれも社内データを自動で読ませるために必要な周辺機能で、方向性は揃っています。
Work IQ はオンとオフを切り替えられます。 オフにすると、Premiumでも応答が社内データに基づかなくなります。
4. データ保護は3段とも同じ
ここは誤解されやすいところです。公式の表では、エンタープライズデータ保護(EDP)は3段ともすべて「はい」です。
Microsoft Entra アカウントでサインインすると、Copilot Chat (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Premium) はエンタープライズデータ保護 (EDP) によって保護されます。
EU データ境界への対応も3段とも「はい」でした。
つまり「無料だから業務に使わせられない」という判断は、少なくともデータ保護の観点では根拠になりません。注意が必要なのは職場のEntraアカウントでサインインしていない場合です。個人のMicrosoftアカウントでCopilotを使うのは別の話になります。
管理者側では、個人アカウントのサインインをテナント制限で制御できます。copilot.cloud.microsoft 自体をブロックするのは公式に非推奨とされているので、URLごと塞ぐ運用は避けたほうがよさそうです。認証の仕組みはEntra IDのSSOをトークンの中身から理解するで整理しています。
5. 料金と、見落としやすい前提条件
公式の日本向けページに載っている価格です。すべて税抜・1ユーザーあたり月額相当で、2026年10月17日に確認しました。
| プラン | 年払い | 月払い |
|---|---|---|
| Copilot Chat | 追加費用なし | 追加費用なし |
| Microsoft 365 Copilot Business(アドオン) | 2,698円(通常3,148円) | 3,778円 |
| Microsoft 365 Copilot(アドオン) | 4,497円 | 記載なし |
| Business Standard と Copilot Business のセット | 3,523円 | 4,228円 |
| Business Premium と Copilot Business のセット | 4,797円 | 5,756円 |
2,698円は2026年7月1日から12月31日までのキャンペーン価格で、年間契約が必要・割引は初年度のみです。来年度は3,148円に戻る前提で見積もってください。
見落とすと見積もりが倍ちがうのが前提ライセンスです。 Copilot Business の価格ページにはこう書かれています。
Microsoft 365 Copilot を購入するには、対象となる Microsoft 365 プランのライセンスが別途必要です。最大 300 ユーザーまで。
Copilotのアドオンだけでは買えません。 対象のMicrosoft 365を契約していることが条件です。300ユーザーまでという上限は Copilot Business のもので、それを超える組織は Microsoft 365 Copilot(4,497円)側になります。
E7 ならアドオンは要らない
ここは調べていて見落としかけたところです。Microsoft 365 E7 には Copilot が最初から含まれていて、アドオンを買う必要がありません。
E7 = E5 + Microsoft Copilot + Microsoft Entra スイート + 1 つの SKU 内の Agent 365。E7 は E5 の厳密なスーパーセットであり、機能を追加するだけで、削除することはありません。
E7 は2026年5月1日に一般提供が開始された新しい区分です。E3 と E5 では Copilot は有料アドオンですが、E7 では本体に含まれます。SharePoint高度な管理も同様で、E3・E5 はアドオンが必要、E7 は込みです。
では E7 にすれば安く済むのか。公式の同じページに載っている価格で計算すると、逆でした。
| 買い方 | 計算 | 合計 |
|---|---|---|
| E5 + Copilot アドオン | 8,995円 + 4,497円 | 13,492円 |
| E7(Copilot込み) | — | 14,842円 |
E7 のほうが月1,350円高くなります。 米ドルの公表価格(E7 は99ドル)で語られる「E7のほうが得」という話をそのまま円に持ち込むと、判断を誤ります。
ただしこの1,350円で Agent 365 と Microsoft Entra スイートが付いてきます。E7 は E5 の厳密なスーパーセットで、機能が減ることはありません。AIエージェントを全社で管理する予定があるなら妥当ですが、「Copilotが欲しいだけ」なら E5 + アドオンのほうが安いことになります。
E7・E5 の価格はどちらもE7の公式ページに並んで載っているもので、ユーザー/月相当・年払い(年間契約)・税抜と条件も揃っています。なお Microsoft の他の公式ページでは E5 に別の金額が出ていることがあるので、見積もりは必ず営業担当か販売店に確認してください。
つまり「Copilotを入れる」の見積もりは、いまE3なのかE5なのかE7なのかで出発点が変わります。 単価だけを並べて比べると判断を誤ります。
6. どれを選ぶかは2問で決まる

社内のデータを自動で読ませたいか。 いいえなら Copilot Chat で十分です。追加費用はかかりません。
はいなら、ユーザー数が300人以下かどうかでBusinessか通常版かが決まります。
試すときは、まずCopilot Chatを全員に開放して、どこで物足りなくなるかを見るのが無駄がないと思います。「ファイルを毎回アップロードするのが面倒」という声が出てきたら、それがPremiumを検討する合図です。逆にその声が出てこないなら、自動で読む機能にお金を払う理由は薄いことになります。
なお Copilot Cowork と Copilot Code は使用量ベースの課金で、利用には Premium ライセンスが前提です。アドオンを買えば全部使えるわけではありません。
7. まとめ
- 「有償版」は3段ある。 Copilot Chat / Microsoft 365 Copilot (Basic) / 同 (Premium)
- Microsoft 365 Copilot (Basic) は有償版ではない。 アドオンを買っていない状態を指す
- 買う物の名前と段階の名前が別軸にあるため、見積もりと公式ドキュメントが噛み合わない
- 決定的な差は「社内データを自動で読むか」。 Basic系も手で渡せば社内文書を扱える
- データ保護は3段とも同じ。 職場のEntraアカウントでサインインしていればEDPが効く
- Copilotのアドオンだけでは買えない。 対象のMicrosoft 365が別途必要
- ただし E7 は Copilot 込み。 E3・E5 はアドオン、E7 は本体に含まれる
- 円では E7 のほうが高い。 E5+アドオン13,492円 に対し E7 は14,842円。差額で Agent 365 と Entra スイートが付く
- Copilot Business は300ユーザーまで。超えるなら Microsoft 365 Copilot
- 2,698円は初年度のみのキャンペーン価格(2026年12月31日まで)
製品名から中身を推測しようとすると必ず外れるので、「アドオンを買っているか」と「社内データを自動で読むか」の2点だけで考えるのが早いと思います。


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